ENEOS(エネオス)の今後の株価は?
ENEOS(エネオス)HDは日本の大手総合エネルギー企業です。
身近なところだと、ガソリンスタンドのイメージが強いですよね。
国内の燃料油の販売シェアで約半分を握る岩盤事業を展開していますが、
- ガソスタ以外に何をやっている会社?
- 脱炭素社会に向けてオワコンになる?
- 10年後の株価は?
など、疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
未来に目を向けると、エネルギー分野は急速に変化しており、エネオスも新たな挑戦に立ち向かっています。
この記事では、10年後の株価を考えるヒントとなる、
- エネオスHDの事業
- 脱炭素社会に向けての事業戦略
- 今後の注目事業
についてまとめました。
エネオスHDの10年後の株価:
エネオスとは
エネオスの企業・事業概要
エネオスは1888年創業の歴史ある会社です。
エネオスと出光興産、コスモエネルギーHDの3社で石油元売り大手と呼ばれています。
そして、2024年3月期の売上高は13兆円超と、3社の中でもダントツの一位。
会社名 | 売上高 |
---|---|
エネオスHD | 13兆8567億円 |
出光興産 | 8兆7192億円 |
コスモエネルギーHD | 2兆7295億円 |
また、エネオスHDの事業は、主に下記3つで構成されています。
- 石油、天然ガス事業
- エネルギー事業
- 金属事業
それぞれの概要をまとめました。
エネオスは石油の探査・生産から精製、販売に至るまでを、一気通貫で行なっています。
実は、石油が私たちの手元に届くまでは下記のステップが必要です。
- 地下深くで石油の存在を確認するための「探査」
- 見つけた石油を掘り出す「生産」
- 地下から取り出された原油は、ガソリンなどにする「精製」
- 精製された製品をガソリンスタンドなどで「販売」
海外を中心とした油田に権益を持ち、探査段階から参画することで、安定的なエネルギー供給に貢献をしています。
インフラ構築や、石油を原料とした化学製品の販売などをしています。
- エネルギーインフラの構築と運営
ガスを安定して供給するためのインフラ(設備やネットワーク)を構築します。
例えば、街中のガソリンスタンドや、家庭用の都市ガス、LPガスなどです。
脱炭素に向けては、EVスタンド、水素ステーションといった事業も行っています。 - 化学製品の生成、販売
石油を原料とした化学製品や高機能素材を多種多様な産業へ供給しています。
例えば、オレフィンと呼ばれる化学製品は、プラスチック製品の基本成分として使用され、そのプラスチックは包装材料、自動車部品、電子機器など幅広い分野で利用されています。
資源開発・製錬・製品製造といったプロセスを通じて、製品素材として使われる金属材料を提供しています。
例えば、銅やニッケルなどの金属は、電子機器、自動車、エネルギー関連製品など、多岐にわたる産業で使用されます。
エネオスは金属の元となる資源の発掘や精製をすることで、私たちの生活を支えています。
直近の業績
エネオスHDの直近の業績は下記の通りです。
年度 | 売上高 | 前年比成長率 | 営業利益率 |
---|---|---|---|
2024年3月期 | 13兆8566億円 | ▲7.7 | 3.4% |
2023年3月期 | 15兆165億円 | 37.5% | 1.9% |
2022年3月期 | 10兆9218億円 | 42.6% | 7.2% |
2021年3月期 | 7兆6580億円 | ▲23.5% | 3.3% |
2020年3月期 | 10兆118億円 | ▲10.1% | ▲1.1% |
2022年3月期、2023年3月期と高い成長率を叩き出しています。
その一方、原油高やインフレにより営業利益率は低めになりました。
エネオスHDの10年後の株価:
脱炭素を見据えた長期ビジョン
元々は石油関連の事業を発展してきたエネオスは、 脱炭素を大きな転換期と認識しています。
また、日本政府は2050年にCO2の排出を実質ゼロにするカーボンニュートラル宣言を出しています。
これを受け、エネオスは、
- エネルギー・素材の安定供給
- カーボンニュートラル社会の実現
の両立に向けた長期ビジョンを定めています。
エネルギー・素材の安定提供と、カーボンニュートラルに向けた自己変革を両立し、持続的な成長を目指します。
定量目標
上図、左側に記載の通り、現在のエネオスの供給シェアは、石油などの従来エネルギーを中心に15%です。
脱炭素が進んだ2050年において、水素や合成燃料など次世代燃料を中心に、国内一次エネルギー供給の20%のシェアを取ることを掲げています。
戦略
エネオスは、本格的な脱炭素社会が訪れるのは2030年以降と想定しています。
そのため、今後数年は土台作りに注力し、2030年以降の世の中の方向性を鑑み、投資拡大する構想。
具体的には、
- 2023-2025年では既存事業の収益を最大化
- そこで生まれた収益を、次の3年間(2026-2028年)で脱炭素などの新規事業に投資
することで中長期と短期の成長の両立を図ります。
なお、現在のエネオスの事業ポートフォリオは「化石」と「素材」の2本柱です。
ここに新たに「脱炭素」「生活プラットフォーム」といった領域を立ち上げ、将来的には4本柱とする戦略です(詳しくは後述)。
脱炭素におけるエネオスの強み
とはいえ、100年以上も石油事業をメインに発展してきたエネオスです。
脱炭素社会に適用に向けて、どのような強みを発揮できるのでしょうか。
それは、石油事業で培ってきた下記のような強みです。
- サプライチェーン
- インフラ
- 国内外の有力企業との関係性
石油事業でも再生可能エネルギーでも
- エネルギーを生成
- 輸送
- 消費者に調達する
という流れは一緒です。
発掘した燃料を現場に届けるまでのサプライチェーンや、燃料を供給するステーションといったインフラが必要です。
エネオスはそういったインフラを日本中に持っていることが、他の企業にはない強みです。
培ってきた強みを活かしつつ、脱炭素社会でもエネルギーのメインプレイヤーであろうとしています。
参考リンク
・エネオスHD会社案内
・エネオスHD中期経営計画
エネオスHDの10年後の株価:
3つの注目事業
脱炭素社会へと移行する中、エネオスとしては新たな収益源を確立していく必要があります。
その中で、エネオスのIR資料などから、10年後やその先に向けたカギとなる事業・戦略をまとめました。
- 生活プラットフォーム事業
- 脱炭素事業
- ENEOSデジタル戦略
概要や取り組み事例を紹介します。
①生活プラットフォーム事業
サービスステーション(≒ガソリンスタンド)を起点に、燃料販売だけではない様々なサービスを提供する事業です。
例えば、下記のようなサービス提供が掲げられています。
- カーシェアリングや電動バイクのレンタルなどのモビリティサービスの提供
- コンビニやカフェの併設、家事代行などのライフサポートサービスの提供
実際に、
- カーシェアサービス「新車のサブスク」
- ランドリーサービス「ENEOS Laundry」
といったサービスは、既に事業化されています。
給油だけでなく、トータルなサービス提供することで、より幅広な顧客ニーズに応える狙いです。
風力や太陽光といった再生可能エネルギーは、CO2を排出しない一方、天候によって得られるエネルギー量が不安定なため、再エネを管理・供給する仕組みが不可欠です。
エネオスは、エネルギーマネジメントシステム(EMS)の構築に取り組み、クラウドベースで一括監視・制御する独自のエネルギーマネジメントシステム“hammock”を開発しました
EMSとは、発電された電力を各地域で管理・供給するシステムのこと。
電力の需要と供給を調整し、余った電力は蓄電するなどして、 無駄なく安定的にエネルギーを供給する技術。
当社は電力事業、水素事業を営んでおり、多くの発電・蓄電設備や水素製造設備を保有しています。これらの設備を最適なタイミングで運用することで、系統の安定化に寄与し、再エネの普及に大きく貢献できます。そこで、電力・水素需要や市場価格、設備の特性などに応じて設備を最適運用するための、独自のエネルギーマネジメント技術の開発に取り組んでいます。
引用元:エネオスHP エネルギーマネジメント技術
参考リンク
・エネルギーマネジメント技術
・ENEOSの取組みについて
②脱炭素事業
社会全体が脱炭素に移行する中、エネオスも再生可能エネルギー供給を強化しています。
具体的には、
- 太陽光、風力など再生可能エネルギーの拡大
- 水素エネルギーの推進
- CO2を地下に貯蔵する技術の推進
- バイオエネルギーの利用
などです。
下記に取り組み事例の一例をまとめました。
水素はクリーンなエネルギー源として注目されていますが、運搬や保管の難易度は高く、技術的な課題が多いです。
エネオスは、水素を効率良く安全に運搬・保管する技術「Direct MCH®」を開発しました。
Direct MCH®とは、水素を化学的に安定した別の液体に変換し、通常のタンクで運搬・保管できるようにする技術です。
目的地で再び水素に戻すことで、エネルギーとして使用することができます。
2021年には、Direct MCH®を利用してオーストラリアのグリーン水素を国内に輸入し、 燃料電池自動車(FCV)に使用する実証に世界で初めて成功しました。
当社では、グリーン水素を製造した後にMCHを製造するという二段階のプロセスを効率化・低コスト化する手法として、Direct MCH®プロセスを開発しています。この手法では、トルエンを直接電気化学反応させることにより、水素ガスを経由せずに水とトルエンからMCHを一段階で製造できます。
引用元:エネオスHP 水素キャリア製造技術(Direct MCH®)
参考リンク
・CO2フリー水素を海外から大量輸入するための技術、Direct MCH®について
植物や動物の生物資源から作られるバイオ燃料は、脱炭素社会実現に向けて注目されています。
一方、現在のバイオ燃料の多くは、とうもろこしなどの食料から生産されており、食料との競合が懸念されます。
エネオスは、食料と競合しない古紙などのセルロース資源から、バイオ燃料を製造する技術を研究しています。
現在までに、実証プラントでの連続生産に世界で初めて成功しました。
さらに、バイオエタノール製造において排出されたCO2を合成燃料の原料として利用し、全体のCO2排出量を削減するアプローチも探求しています。
合成燃料とは、排出された二酸化炭素(CO2)から原料に作られるエネルギーです。
エネオスは、これらのクリーンなバイオマス発電を、2027年以降に商用化することを目指しています。
実証プラントでの知見をベースにより大きな規模へのスケールアップ検討にも取り組んでおり、2027年以降の商用規模でのプラント稼働を目指して技術開発を進めています。
引用元:エネオスHP バイオ燃料
参考リンク
・脱炭素社会へ向けたセルロース系バイオエタノール製造
③ENEOSデジタル戦略
エネオスは「ENEOSデジタル戦略」を定め、組織としてテクノロジーやデータの活用を掲げています。
「確かな収益の礎の獲得」と「エネルギートランジション実現」に向けて、DXを加速すると謳われています。
下記に取り組みの一例をまとめました。
参考リンク
・ENEOSデジタル戦略
これまで、プラントでは24時間体制でヒトが監視・操作をしていましたが、少子化の中で人材不足が懸念されています。
そこで、エネオスはAI技術を持つPrefered Networksが協力し、プラント(工場)の運転を、AI技術を使って自動化するシステムを開発。
これまで2日間の連続自動運転に成功しており、省力化による競争力強化に貢献するものとして期待されます。
本開発は人の技量に左右されないプラント安定運転の確立による保安力の向上に貢献するものであり、AI技術を用いた実際のプラントでの自動運転は国内初※1の取り組みです。
引用元:ENEOS:国内初、AI技術による石油化学プラント自動運転に成功
参考リンク
・ENEOS:国内初、AI技術による石油化学プラント自動運転に成功
Matlantis(マトランティス)は、Preferred Networks(PFN)とENEOSが共同開発した汎用原子レベルシミュレーターです。
新素材の開発時など、原子の分析や特定にこれまで膨大な時間がかかっていました。
Matlanticは最新のAIを活用することで、これまで数ヶ月かかっていた計算を0.1秒で完了することも可能な代物です。
企業の研究開発の効率化・高度化に貢献します。
なお、MatlantisはPFNとの共同出資会社「Preferred Computational Chemistry」を通じ、SaaSサービスとして販売されています。
機能性分子の候補は10の60乗個にも及ぶと言われていますが、これまでに人類が有用性を確認できたのは、そのほんの一握りです。Matlantisは、深層学習などのAI技術を活用した高速な汎用原子レベルシミュレーションで、膨大な未知分子の海から有望な分子を照らしだし、革新的なマテリアルの創出に貢献します。
引用元:Matlantis
ENEOSがこれまで培った技術をサービス化し、収益を得る新しいビジネスモデルにチャレンジしています。
参考リンク
・Matlantis
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エネオスHDの10年後の株価
まとめ
本記事では、エネオスHDの事業内容や今後展望、注目事業をまとめました。
エネオスは石油事業で培った資産を活かし、短期・長期の成長の両立を狙っています。
今後のカギとなる「生活プラットフォーム」「脱炭素」「テクノロジー」については、着々と実績を積み上げています。
今回の内容をもとに、エネオスの10年後の株価を考えてみてはいかがでしょうか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
その他、当メディアでは、米国株・日本株の注目銘柄について、投資判断に役立つ最新情報をまとめています。
代表的な記事のリンクを下記に用意したので、ぜひご覧ください。