楽天グループの今後の株価は?
楽天グループと言えば、
- 楽天市場
- 楽天カード
- 楽天モバイル
など多くのヒットサービス・商品を多く抱える企業。
昨今は、携帯事業の参入で大赤字を叩き出すなど、良くも悪くも投資家の注目度は高いです。
10年後や今後の株価が気になる方も多いのではないでしょうか。
楽天のIR資料等をもとに、楽天の現状・今後について
- 国内事業
- 海外自重
- テクノロジー
の3つの軸で解説します。
楽天グループの10年後の株価:
楽天グループとは
企業概要
楽天グループは1997年の創業以来、
- 27期連続増収
- 売上収益2.07兆円
を誇る日本のメガベンチャーです。
2023年度も前年同期比7.8%の増収をするなど、まだまだ成長を続けています。
特徴は、ECサービス(楽天市場)起点とした楽天経済圏。
国内では1億人以上が楽天IDを保有しています。
楽天のビジョンは「グローバルイノベーションカンパニー」です。
世界にイノベーションを発信するカルチャー作りとして、
- 社内公用語の英語化
- 従業員の多国籍化(外国籍比率は20%)
- 三木谷社長出席の全社朝会を毎週実施
といった取り組みをするなど、先進的なカルチャーな会社です。
直近の業績推移
売上高 (百万円) | 営業利益又は損失 (百万円) | |
---|---|---|
2019年 | 1,263,900 | 72,745 |
2020年 | 1,455,500 | ▲93,849 |
2021年 | 1,681,757 | ▲224,999 |
2022年 | 1,920,894 | ▲335,192 |
2023年 | 2,071,315 | ▲153,041 |
モバイル事業への参入による基地局への先行投資で、赤字が続いています。
一方、売上高は全社で2億円を超え、赤字幅は2022年で底を打ったようにも見えます。
ここに関しては後ほど紹介する楽天シンフォニーが鍵を握っています。
株価推移
株価は2024年6月現在は800円付近です。
(ITバブル崩壊前は6,000円弱もあったのは例外的としても、)直近は低位で安定してしまっています。
2020年以降はコロナバブルで一度は上昇基調に行きましたが、基本的にはモバイル事業への先行投資が不安視されている状況です。
現在は配当無しですが、代わりに楽天モバイルをお得に利用できる株主優待がついてきます。
それでは、ここから楽天の10年後の株価を握る注目事業を以下3つの観点でまとめていきます。
- 国内事業
- 海外事業
- テクノロジー
楽天グループの10年後の株価:
①国内事業
楽天の国内事業は3つのセグメントで提供されています。
- インターネットサービスセグメント
楽天市場や楽天トラベルなどのオンラインサービス - フィンテックセグメント
楽天カードや楽天銀行、楽天証券などの金融事業 - モバイルセグメント
楽天モバイルを中心とした携帯事業
国内事業
①インターネットサービスセグメント
②フィンテックセグメント
①インターネットサービスセグメント②フィンテックセグメントは、国内を主なターゲットとしており、創業26年経った今でもまだまだ伸び続けています。
下記は、主要サービスの直近の成長率と業界平均の比較です。
主要サービス | 成長率 | 業界平均 |
---|---|---|
国内EC流通総額 (楽天市場、楽天Rakumaなど) | 直近3年間の年平均成長率8.1% | 3.1% |
楽天トラベル 国内宿泊流通総額 | 2019年比42.5% | ▲9.5% |
広告事業売上高 | 前年同期比成長率12.9% | -% |
楽天カード ショッピング取扱高 | 直近3年間の年平均成長率24.1% | 7.9% |
楽天銀行 預金残高 | 直近3年間の年平均成長率36.3% | 5.3% |
注目すべきは、楽天がビジネスを行っている領域は、今後も市場自体が伸び続ける点です。
特に、日本では
- EC
- キャッシュレス
- 家計における株式保有比率
は他の先進国に比べて低く、今後、中長期に渡って拡大が見込まれます。
下記は、それらの日本と他の先進国との比較です。
カテゴリ | 日本 | 他国 |
---|---|---|
EC浸透率 | 9% | 世界平均 20% |
クレジットカード浸透率 | 28.6% | 米国 51.5% 英国 60.9% |
家計の株式保有割合 | 16.7% | 米国 56.2% |
特に、直近で口座開設数の伸びが著しい楽天証券については、2024年より新NISAが始まるなど、国策として株式による資産形成が後押しされています。
そういった背景も相まって今後も継続的な成長が期待できます。
国内事業
③モバイルセグメント
モバイルセグメントは、2019年に新規参入し、基地局開設に積極的に投資しています。
2023年4月時点で450万人だった利用者数は、2024年4月には650万人に増加しました。
一方、2022年度は楽天モバイル事業単体で5,000億円近い赤字を叩き出すなど、短期的には楽天グループの経営の重しになっています。
また、黒字化には収益を伸ばす必要があり、最低800万契約が必要とされますが、そのためには通信品質の向上などの幾つかの課題があります。
そういった点から、モバイル事業の戦略性に疑問を持つ人も少なくありません。
また、今後3年で9,000億円の社債の返還が控えており、一部では返済できずに潰れるのでは?という声もあります。
個人的には、楽天モバイルは多額の投資で構築した通信インフラを外販することで、投資回収をする思惑のように見えます。
こちらは後ほどのテクノロジー投資の文脈でご紹介します。
楽天グループの10年後の株価:
②海外事業
グローバルイノベーションカンパニーを目指す楽天にとって、海外売上の拡大は兼ねてからの野望。
過去、2010年代には「2020年に海外売上比率を5割に引き上げる」ことを目標に掲げ、欧米やアジア各国に参入しました。
しかし、Amazonなどの競合もひしめく中、特にEC事業は苦戦を強いられてしまい、2010年代中盤には大半の地域から撤退しました。
2023年9月現在の海外売上比率は不明ですが、依然、海外事業は成長途上であると考えられます。
英国の調査会社ユーロモニターによると、欧州のネット通販市場における楽天の売上高シェアは各国で1%以下にとどまる。
引用元:日経新聞
現在、楽天がグローバルに広く展開しているサービスは下記です。
各成長率は2023年度のIR資料を参考にしています。
- Rakuten Viki
韓国、中国などアジア圏のドラマを専門に配信するビデオオンデマンド。
全世界で3,000万人以上に利用されており、登録者数は前年同期比で+23.4%と高成長を維持。 - Rakuten Rewards
米国で展開しているキャッシュバックプラットフォーム。
Rakuten Rewardsを介してショッピンングをすることで、購入額の一定額がキャッシュバックされる仕組み。
2023年度の売上高は10億ドル弱(日本円で約1,500億円) - Rakuten Kobo
世界で3,800万人以上が利用する電子書籍サービス。
登録者数は前年同期比6.5%増加。 - Rakuten Viber
東欧を中心に総登録者数を14.2億人を誇るメッセンジャーアプリ。
前年同期比+5.5%と伸びが続いています。 - Rakuten TV
楽天ポイントを貯めつつドラマや映画をお得に見れるストリーミングサービスです。前年同期比ユーザー数は42.8%と高成長です。
現在、海外事業は赤字ですが、早期の黒字化を目指すとしています。
そして、楽天のグローバルビジネスの柱として期待されるのが、次にご紹介する楽天シンフォニーです。
楽天グループの10年後の株価:
③テクノロジー
楽天シンフォニーは、楽天がモバイル事業で構築した通信インフラを外販するビジネスです。
ざっくりAWSの通信インフラ版と考えれば良いです。(Amazonは自社のEC事業用に構築したITインフラをAWSとして外販しています)
通信インフラを新規構築、もしくは強化する通信事業者に対して、早く安く通信インフラを提供します。
2021年8月の設立から以来、日本円換算で900億円以上の売上を計上。
クライアント数は19社を獲得しています。
楽天シンフォニーは、下記の2つの特徴を持った世界初の試みとして、海外で受賞歴があるなど、グローバルで注目されているサービスです。
- 仮想化無線基地局(vRAN)
これまで通信インフラ構築のためには、
・専用のハードウェア
・ソフトウェア
をセットで調達する必要がありました。
一方、楽天シンフォニーではクラウド技術を使うことで、顧客は自社のサーバーを調達するだけで、楽天の基地局に搭載されている通信インフラ機能を利用することができるのです。
顧客からすると初期投資を少なく通信インフラを建てれる点にメリットがあります。 - OpenRAN
実は、通信インフラのソフトウェアはいくつかの部品に分かれています。
しかし、これまではそれらの部品が密結合され、顧客はソフトウェアの単位で購入するしか選択肢がありませんでした。
OpenRANは各部品が疎結合になり、顧客側が最適な部品を選べるというイメージです。
自動車に例えるなら、タイヤはA社でボディはB社で…のように選べるイメージ。
設計の自由度が高まるので、より顧客にフィットした基地局構成ができます。
上記は通信インフラの次世代技術とされており、これらを商用化した事例はありませんでしたが、2023年12月に、楽天シンフォニーの仕組みを使ったネットワークサービスが、ドイツで初めて商用展開されました。
楽天モバイルは楽天シンフォニーで作られた基地局をベースに、既に日本の数百万人のユーザーに通信サービスを提供しており、そういった実績が評価されています。
そういった実績のある次世代基地局機能を外販するという点で、注目度が高いというわけです。
楽天の命綱になる可能性があるのが、自社で導入した仮想化通信技術の輸出ビジネスだ。オープン化や仮想化への期待が高まるなか、楽天はいち早く基地局を含めた完全仮想化ネットワークを構築し、世界の通信事業者から大きな注目を集めている。
引用元:日経XTECH
三木谷社長の思惑としては、楽天モバイルの先行投資は楽天シンフォニー事業で取り返す算段だと思われます。
このビジネスが成功した暁には、今後5年、10年スパンでの株価の伸長が期待できるかもしれません。
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まとめ
本記事では、楽天のIR資料などから国内・海外・テクノロジーの観点で現状や今後をまとめました。
楽天が国内で展開するインターネット、フィンテック事業は業界自体が伸びているため、今後も安定した成長を期待できます。
モバイル事業は短期的には業績の重しになっていますが、世界初のサービス「楽天シンフォニー」で世界を狙っています。
今後の行く末は読みにくいですが、大化けする可能性もあり、可能性を感じる方は、余剰資金で買ってみるのが良いかもしれません。
楽天の10年後の株価を考えるヒントとしていただければ幸いです。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。