東京電力の今後の株価は?
東京電力ホールディングスは売上ベースで日本最大の電力会社です。
1883年に創業した東京電燈という会社がルーツとなる、歴史のある企業。
一方で、直近は競合他社も含めて電力会社の株価は低迷の傾向です。
特に、東京電力は福島第一原発事故以来、株価はガクッと下がっています。
この記事では、10年後の株価を考えるヒントとなる、
- 事業内容
- 株価が低迷している理由
- 今後の注目事業
についてまとめました。
東京電力の10年後の株価:
東京電力ホールディングスとは
東京電力ホールディングスの企業概要
東京電力ホールディングスは、東京電力などの複数の子会社を抱える持ち株会社です。
2022年度の売上高は8兆1,122億円・経常利益は▲2,853億円、2023年度の売上高は6兆9,183億円・経常利益は4,255億円でした。
また、福島原発事故による賠償金支払いは現在も重くのしかかっています。
国からの支援金を頼りに、合計10兆円にものぼる金額を賠償しています。
そのような経緯もあり、国の機構が株式の過半を株を保有しており、実質国有化されています。
東京電力ホールディングスの事業内容
東京電力ホールディングスのグループ会社として4つの主要子会社があります。
- 東京電力フュエル&パワー株式会社
火力発電所やLNG基地の運営やLNGの輸入販売などを行う。 - 東京電力パワーグリッド株式会社
東京電力管内における送配電設備の保守・管理などを行う。 - 東京電力エナジーパートナー株式会社
一般家庭や企業向けの電気の小売販売。
太陽光発電や蓄電池などの導入・運用支援も行う。 - 東京電力リニューアブルパワー株式会社
太陽光発電や風力発電、水力発電などの再生可能エネルギー発電所を運営・管理。
脱炭素社会を見据える中、総合エネルギー企業への変革を目指し、再生可能エネ等も幅広く手掛けています。
2023年度は再生可能エネルギー需要の増大に伴い、④が前年同期比+24.2%と伸びました。
一方、売上ベースでいくと①②③が98%ほどを占めており、旧来のエネルギー事業がビジネスの大半を占めている状況です。
東京電力の10年後の株価:
株価低迷の理由3つ
2000年代は概ね2,000円台で推移していた株価ですが、現在は500円〜800円台ほどを推移。
直近の株価が冴えない背景には、下記の理由があると考えられます。
①電力販売/調達価格の変動
下記2点は、主力事業である電力小売事業を苦しめています。
- 電力販売価格の下落
- 調達価格の上昇
電力小売は長い間、電力関連会社の専業でしたが、2016年に自由化がされました。
競争原理により電力小売価格が下がり、東京電力をはじめとする既存プレイヤーには打撃になりました。
また、直近はコロナでLNGなどの資源価格が高騰したことで、仕入れコスト増大。
このように、仕入れ価格の上昇と販売価格の下落のダブルパンチにより、2022年度は最終赤字に転落してしまいました。
こういった直近の業績面が、直近の株価低迷の背景にあると考えられます。
②大株主の売却リスク
東京電力の株式は、過半数以上(54%)を国の機関「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」が握っています。
賠償金精算の関係で“一時的に”保有している建て付けなので、いつかのタイミングで当機構は株式を売却するでしょう。
その際には株価の大きな下落圧力となります。
大株主の売却への警戒感から、積極的な買いを控える投資家が多いのではないでしょうか。
③化石燃料への依存
昨今の脱炭素に向けた動きとして、東京電力は、CO2排出量に関して下記の目標を掲げています 。
- 2030年度
販売電力由来のCO2排出量を2013年度比で50%削減 - 2050年度
エネルギー供給由来のCO2排出実質ゼロ
一方で、2022年度現在の状況は、東京電力が発電した電気のうち、73%は火力発電由来です。
カーボンニュートラルに向けた取り組みはしているものの、割合として見れば依然高いです。
昨今はESG投資の高まりもあり、CO2の排出量が多い企業には投資マネーも集まりにくくなっています。
東京電力の10年後の株価:
今後の注目の取り組み3選
事業計画では中期で4,500億円の利益創出のために、その半分を電気事業以外の「新たな事業領域」で稼ぐとしています。
今回は、注力事業の一例を紹介します。
電力を供給するだけでなく、
- 需給の最適化
- 街づくり
などまで踏み込むビジネスモデルの変革が謳われています。
①蓄電池のマルチユース事業
一つ目の注力事業は、蓄電池のマルチユース事業です。
マルチユース蓄電池とは、蓄電池を介して電力の需要と供給を調整する仕組み。
例えば、太陽光や風力発電から発電された余剰電力を蓄え、 家庭や建物や電力が不足した時にタイムリーに供給するといったイメージです。
とはいえ、下記のようなケースに応じれ、適切な対応を取るのは複雑なオペレーションが必要です。
- 停電などで急遽電力が必要になるケース
- 逆に需要がない時には電力の卸売取引所(JPEX) での放電(売却)をするケース
マルチユース蓄電池は、ITの力を用いることで下記のような多くのデータを分析し、その時々に応じた運転方法をシステムがコントロールすることに特徴があります。
- 需要予測
- 市場価格予測
- 気象予測
電力の充電・放電の計画立案と実行を行えるエネルギーマネジメントシステムとされています。
②アグリケーション事業
二つ目の注力事業は、上記のマルチユース蓄電池を活用した新規事業です。
これまでの電気の販売事業から、お客さまに密着した設備サービス事業(アセット)へのシフトを目指します。
電気を売るだけでなく、各所で発電したエネルギー資源を集めて、各家庭や取引所などに最適に配分するインフラ事業です。
こういった新たな事業を「まち」単位で取り組むことで、カーボンニュートラルなどを念頭にエリア価値の向上に貢献します。
また、外部事業者とのアライアンスやグループ再編も視野に入れた事業構造変革を検討するとしています。
③オープンイノベーション
前述した①蓄電池のマルチユース事業、②アグリケーション事業のようなビジネスモデルの変革には、技術面のブレイクスルーが必須です。
知見をもつ外部事業者と組み、新規事業創出や付加価値向上に取り組もうとしています。
東京電力ベンチャーズは、ベンチャーキャピタルとして、エネルギー領域のスタートアップへの投資・シナジー獲得を目指しています
これまでに米国や日本の幾つかのスタートアップに投資をしてきました。
- 蓄電池・太陽光事業者:Adonグループ(米国)
- V2Bサービスを得意とするFERMATA(米国)
※Vehicle to Building: EV車の電力をビル内へ融通する仕組み - 次世代電力プラットフォームの研究開発:TRENDE(日本)
TEPCO i Frontierは、戦略コンサルファーム「ICMG」との合弁会社として2017年に設立されました。
東京電力が持つ膨大な顧客基盤を活用し、外部事業者と新たなサービスを生み出す試みです。
オープンイノベーションで暮らしのあり方を変える新たなサービスの創出を目指します。
これまでに、引越し時の電気、ガスなどの住所変更等を一括で行えるサービスなどをリリースしました。
東京電力の10年後の株価:
電力供給の世の中的な動きにも注目
2011年の福島第一原発事故以来、原子力発電所の新設は控えられてきました。
しかしここにきて、政府が原子力発電に関する方針を見直す動きが出てきています。
2022年に次世代の原子力発電所の開発・建設を検討するよう岸田総理から指示が出たのです。
新増設は想定していないという現在の方針を転換し、中長期での電力確保を目指し、来夏以降に最大で17基の原発を再稼働させる意向であることも伝えられた。
引用元:四季報オンライン
そして、中長期での電力確保を目指し、2023年夏以降には最大で17基の原発を再稼働する意向であることも伝えられました。
一部報道によると東京電力は柏崎原発を2025年に再稼働することを織り込んでいるとのこと。
東電は柏崎刈羽7号機を今年10月に、6号機を2025年4月に再稼働する前提で電気料金の値上げ幅を算定している。
引用元:東京新聞
2011年以後は、化石燃料やLNGの調達コストに悩まされがちがった東京電力ですが、原発が再稼働すれば経営上のリスクが軽減されます。
このような国としての電力供給の方針によって東京電力の今後の業績・株価は左右されそうです。
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東京電力の10年後の株価
まとめ
本記事では、東京電力の株価が低迷している理由や今後に向けた注目の取り組みをまとめました。
東京電力の足元の株価推移は極めて厳しい状況。
また、周辺環境としてもいますぐに飛躍的に株価が上昇するのは考えずらいかもしれません。
一方で、電力供給を巡る国の方針や、東京電力自身のビジネスモデル変革には要注目です。
その他、当メディアでは、米国株・日本株の注目銘柄について、投資判断に役立つ最新情報をまとめています。
代表的な記事のリンクを下記に用意したので、ぜひご覧ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。