テスラ株はオワコン?将来性ある?
テスラは言わずと知れたアメリカの有名EV(電気自動車)メーカー。
コロナ禍で10数倍に株価が跳ね上がり、GAFAMに並ぶ人気銘柄となりました。
ところが、一時はピーク時から半値以下に下落。
直近は持ち直しているものの、今後の株価が気になる方も多いと思います。
テスラの10年後の株価を予想するためのヒントとなる、テスラのマスタープラン(長期事業計画)をご紹介します。
日本ではあまり報じられていませんが、テスラは単なるEV企業ではなく、脱炭素に向けた超長期のビジョンを持っています。
テスラへの投資を検討している方は必見です。
10年後の株価を握る
テスラのマスタープランとは?
マスタープランは、CEOのマスク氏が不定期で発表する長期の事業戦略です。
これまで発表されたマスタープランは下記の3つです。
1が発表された10年後に2が発表され、2023年に3が発表されました。
これを知れば、きっとテスラという会社に対する見方が変わるでしょう。
10年後の株価を握る:
テスラのマスタープランをチェック
マスタープラン1
黎明期〜EV車の普及
マスタープラン1は遡ること15年以上、2006年に発表されました。
創業間もないテスラがいかにして電気自動車を普及させ、脱炭素に貢献するのかが書かれています。
具体的には、下記のようなものです。
- 富裕層向けの少量生産者(スポーツカー)を作る
- その売上でより低価格な中量生産車を作る
- その売上でさらに低価格な大量生産車を作る
- 上記を進めながらソーラーエネルギーを作る
創業間も無く、生産設備も乏しいテスラが低価格帯のEVを作るのは不可能です。
そこでテスラは、まずは富裕層向けのスポーツカーを作り、そこで得た資金を、大衆向けの製品開発に投資する戦略を取りました。
結果的に、この計画通りにテスラはシェアを拡大し、今では世界的EVメーカーとなりました。
未だに、テスラ車といえば高級車のイメージですが、直近は値下げのニュースが聞こえてきています。
これも自社の生産能力に応じて価格を下げる当初の戦略の一つでしょう。
10年後には、テスラが大衆車としての地位を獲得しているかもしれません。
また、テスラのビジョンはEV車の販売ではなく、脱炭素への貢献であることが明確に書かれています。
テスラモーターズの包括的な目的 (そして私がこの会社に出資している理由) が、採掘しては燃やす炭化水素社会から、私が主要な持続可能ソリューションの1つであると考えるソーラー発電社会へのシフトを加速することだからです。
引用元:テスラ
マスタープラン2
EV車ビジネスの拡大
マスタープラン2は、1が発表された10年後の2016年に発表されました。
持続可能なエネルギー経済の達成に向け、EV車ビジネスを拡大・加速すると書かれています。
具体的な内容は下記です。
- 製品ラインナップ拡充
すべての主要セグメントをカバーするためEV製品ラインナップを拡大する - 太陽光発電装置の開発
バッテリーストレージとシームレスに統合された太陽光発電装置を作る - 自動運転技術
人が運転するよりも10倍安全な自動運転技術を開発する - カーシェアリング
車を使っていない間、その車でオーナーが収入を得られるようにする
それぞれの内容について見ていきましょう。
テスラは消費者向けだけでなく、乗客用・輸送用トラックに参入すると表明しました。
EV業界の中で存在感を出し始めたテスラは、マーケットリーダーとして全方位の製品拡充を発表したのです。
実際に2022年にEVトラック「Mini」が投入されるなど、有言実行で計画を進めています。
EV車の普及には、EV充電機の普及が欠かせません。
2015年にテスラはPowerwallという家庭用蓄電池をリリースしました。
自宅で発電した太陽光を蓄電池に貯めることで、雨の日も夜も充電ができる仕組みです。
2023年1Q時点で、EV車以外の売上は売上全体の5%を占めるまでになりました。
車と充電の両方を抑えることで、EVのエコシステムを構築する狙いがありそうです。
マスタープラン2では、完全な自動運転技術は、人間が運転するよりもはるかに安全なものになると書かれています。
現在までに、テスラは「オートパイロット」という自動運転機能をリリースしています。
他の自動車メーカーと同様にレベル2の実装に留まっていますが、今後の飛躍に期待です。
テスラがカーシェアを提供することで、ドライバーに副収入が生まれ、テスラを所有する実質コストが低下すると書かれています。
テスラ車の生産コストがやや高止まりする中での普及策と言えるでしょう。
この記事によると、2016年にアメリカでテスラのカーシェアサービスが開始したようですが、最新状況は定かではありません。
日本でも期間限定でT-Shareというカーシェアサービスがあったようですが、令和3年3月をもって終了しています。
試行錯誤の段階にあるようですが、今後の動きに注目です。
マスタープラン3
脱炭素の複合企業への変革
そして、直近2023年に発表されたマスタープラン3です。
脱炭素社会の実現に向け、あらゆるものを電動化することで、エネルギーと文明の両立が可能になると書かれています。
発表されたマスタープランは下記です。
- 既存の化石燃料を置き換え
化石燃料を再生可能エネに置き換えることで、エネルギー効率を上げる - 電気自動車への完全な移行
電気自動車への移行を完全なものにする。 - 家庭用暖房への参入
家庭の暖房器具のヒートポンプへの切り替え - 鉄/プラスチック/水素製造の電動化
脱炭素社会実現に向け、高温熱供給と水素製造の電動化を行う - 船舶/航空機燃料の電動化
持続可能な燃料を飛行機や船舶にも適用する - 持続可能なエネルギー経済の実現
電動化した世界を作り、持続可能な経済・世界を作る
マスタープラン2よりも、さらに野心的です。
それぞれの内容について見ていきましょう。
マスタープラン3では、化石燃料のエネルギー効率の悪さを繰り返し説いています。
化石燃料は燃やされる原油の1/3しかエネルギーとして取り出すことはできず、車に積んでいるガソリンのうち2/3は熱として放出されてしまうそう。
完全な再生可能エネ社会を実現することで、人々の生活に必要なエネルギー量は半分になるとのことです。
電気自動車は、従来の自動車よりも数倍のエネルギー効率化が図れるとのこと。
既に、電気自動車への移行は進行中であり、今後更なる普及が見込まれます。
欧米と中心とした各国の政策を見ると、10年後には新車販売の大半が電動車になっていることが予想されます。
テスラは、化石燃料由来の暖房器具の代替として「ヒートポンプ」という手法を使った暖房器具を提唱しています。
上述したように、化石燃料はエネルギー効率が悪いからです。
現状、ヒートポンプが使われているのは、世界全体の暖房器具に対して10%ほど。
年間成長率も10%とまだまだで、多くの伸び代を秘めています。
実は、テスラの電気自動車には、ヒートポンプ型の暖房が標準搭載されており、このノウハウをもとに家庭用ヒートポンプ市場への参入を目論んでいます。
鉄やプラスチックを作る際、かなり高温の熱が必要になり、その温度の出力に化石燃料が使われています。
また、水素を製造する際も、電気を分解するのに大規模な電力が必要です。
ここにもテスラの蓄電技術を応用すれば、電気エネルギーを適用できるということです。
EV車販売よりもかなり踏み込んだ、脱炭素社会実現に向けてのソリューションと言えるでしょう。
テスラ曰く、現在の技術レベルで、船舶の燃料を電動化することは可能だそうです。
一方、航空機に関しては、まだまだ技術改良が必要で、研究開発を進めています。
また、航空機については、EV車がそうであったように、蓄電池搭載に最適化した新たな機体が発明され、今の機体より安価に製造できるようになるとのこと。
船舶や航空機に限らず、将来的に全ての輸送手段は電動化できるとマスク氏は言っています。
テスラのノウハウを総動員することで、電動化した持続可能な世界を目指します。
一方、一朝一夕で電動化社会を作れるとは、マスク氏自身も思っていません。
テスラの試算によると、完全な電動化社会を実現するためには現在の約5,000倍の蓄電能力が必要とのこと。
また、今後10年で10兆ドルの巨大な設備投資が必要とマスク氏は述べています(日本円にして1,000兆円以上)。
途方もない数字なので、やはり今後10年スパンの長期計画と認識した方が良いでしょう。
番外編:独自の充電インフラ(NACS)を他社に開放
EV車販売と並び、テスラが注力しているのはEV車の充電インフラです。
現在、スーパーチャージャーという商用の充電インフラや、家庭用の充電器を販売しています。
スーパーチャージャーは日本を含む世界で50,000基以上が既に稼働しています。
テスラは、他社に先駆けて普及させたこのインフラを北米の標準規格(NACS)とし、他社に開放する動きを見せています。
これまでに、フォードやGM、ボルボ、日産といった自動車メーカーが、2025年からの採用を表明しています。
また、2023/10にはトヨタも採用を決めました。
EV車普及の前提となる充電を抑えることで、車を販売するだけではない幅広いビジネスが可能になると考えられます。
そうなった場合、テスラが電動化社会になくてはならないプラットフォーマーとなるでしょう。
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まとめ
本記事では、テスラの長期経営計画「マスタープラン」を紹介しました。
テスラはEVの会社から、脱炭素の複合企業への変革の真っ最中です。
この内容を参考に、テスラの10年後の株価を予想してみてはいかがでしょうか。
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